ISO食品安全委員会第16号

ISO食品安全委員会です。
本日の食品安全通信は「異物混入と危機管理コミュニケーション」
についてお話しします。

 東京都保健医療局の食品の苦情統計*によると2022年度の要因別の苦情件数4071件中異物混入が565件で13.9%を占めています。消費者の苦情が発端になって信用を失った企業や店舗等は事業継続が困難になることがあります。SNS等で拡散されると情報はまたたく間に広がり、対応の不備も加わり炎上することもあります。
 居酒屋のモツ鍋に大量の虫が混入した事例では旧Twitter(現 X)に写真が投稿され、居酒屋を擁護するコメントが関係者の投稿だと分かり、それに対する批判も加わって炎上しました。
 お菓子にカメムシが混入した事例では、訴えた消費者に長期間連絡をしなかったことが報道番組で放送され、企業の対応の遅さに批判が集まり炎上しました。
 パンに異物(小動物らしきものの一部)が混入した事例では、消費者からの異物混入の連絡の2日後にお詫びと自主回収に関するお知らせをWebSiteに掲載するなど、迅速な対応がなされたことから大きな炎上に至しませんでした。消費者からの苦情を早期に把握し、迅速に誠実に初期対応を実行することで炎上を抑えることに成功した事例です。
 炎上を察知して数時間以内にWebSiteやSNSに公式見解や今後の対応について掲載しないと、ネット上でデマや誹謗中傷が加速し、大炎上になる可能性があります。
 企業は炎上を防ぐための対策として、普段から準備し炎上したことを想定した研修を行ったり、炎上を早期発見するためのしくみづくりや、炎上を早期に沈静化するため対策を講じています。“炎上保険”をかけることもあります。組織内・外との危機管理コミュニケーション力が組織の信頼や評価を左右します。
 このような危機管理は組織全体で取り組みますが、個々の危機管理能力の向上も求められています。
 *https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin//kujou/index.html

環境衛生学研究室 岸本 満

食教育学研究室 髙田 尚美

給食経営管理研究室 福岡 恩 上田 和世
食品安全チーム 大野 吉孝